プチ・シニアの明るいひきこもり生活

刑事コロンボ「黒のエチュード」

      2015/08/30

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“But that’s me, I’m paranoid. Like every time I see a dead body, I think it’s a murder. Can’t imagine anyone murdering themselves. Especially a young girl like that, beautiful eyes. But that’s me. I’d like to see everyone die of old age.” – Columbo

「あたしゃ、そういう人間なんだ。一種の偏執狂さ。死体を見る度に殺人だと思っちまう。自殺する人間がいるなんて信じられないんだ。特にさ、あんなきれいな目をした若い子がさ。でも、あたしゃ、そうなんだよ。みんな寿命を全うして欲しいんだよ。」

 第10作。ここから第2シーズンになるらしい。

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 今回の犯人は、指揮者だ。いわゆるセレブリティ(有名人)としては、「構想の死角」のミステリー作家、「二枚のドガの絵」の美術評論家に続く3人目となる。個人的な印象だと今回が圧倒的にセレブリティ度は高い気がする。とんでもない豪邸に住んでいるし、車もジャギュアのEタイプだ。その上オーケストラの指揮者だ。圧倒的だ。

 はっきり言って今回のトリックは今ひとつ。最後に犯人の妻の証言を必要としていることも、トリックとしては弱いと思う。傑作ではないかもしれないけれど、私はこの作品が結構好きだ。音楽がテーマだということもあるけれど、それ以外にもいろいろ見ころがあるからかもしれない。

 この作品で私が一番好きなシーンは、冒頭に一部引用したシーン。コロンボが被害者ジャニファーの捜査資料とスクラップを見比べながら、やるせない思いを言葉を重ねて同僚に語っている。

 エンディングも素敵だ。犯人のベネディクトが連行された後、コロンボが当夜のコンサートのビデオを見ようとするのも粋な終わり方だと思う。

犯人のジョン・カサヴェテス

 この天才指揮者を演じているのは、ジョン・カサヴェテス。初めて見た当時はたぶん知らなかったと思うけど、その後映画監督として名前はよく聞く。残念ながら、彼の作品を私は見ていないのだが、興味は惹かれている(ちょうど、昨日「こわれゆく女」をやっていて録画したので、これを書き終わったら見ようと思っている。)

 いやぁ、しかし、彼はかっこいい。タクトの振り方とかはよくわからないので置いておくとしても、存在としてはまさに「天才指揮者」にしか見えない。豪邸に佇む姿になんの違和感もない。ジャギュアに乗り込むシーンは、まるでジャギュアのCMのように決まっている。そう、繰り返しになるが、とにかくかっこいい。これまでの犯人の誰よりもかっこいい。

 私はかっこいい正義の人にはあまり惹かれないが、かっこいい犯人にはすごく惹かれる。これは私に「犯人的」資質のある悪人だからというわけではない(たぶん)。現実の世にはびこる悪人がみんなカッコ悪いからかもしれない。
 とはいえ、この天才指揮者ベネディクトはただかっこ良く描かれているわけではない。弱さがなければ、こんな風に殺人を犯すこともないわけだし。

 例えば、殺害する相手ジェニファーにこう言われる。

Don’t worry, You’re genius. You’ll always have everything. 「心配しないで、あなたは天才なのよ。いつだってなんだって手に入るわ」

 そう言われても、たぶん彼は信じられないんじゃないだろうか。主導権がジャニファーにあるのは明らかだ。

 さらに、エンディングのシーンで彼は妻の耳元で囁く。

Jut for the record, I love you. I always loved you. I hope you don’t have to go through your life alone.
「はっきり言っておきたいんだ、僕は君を愛している、常に君を愛してきたんだ。君がこの先孤独な人生を送ってほしくないんだ。」

 吹き替えでは「証言の時それを思い出してくれ。」となっている。裁判で証言を覆して欲しいと頼んでいるのだ。ある意味、悪あがきをしているわけだ。

 私自身は、そういうところも含めて、このベネディクトがいいと思っているけれど。。

 彼は最後にコロンボにこう言う。

Goodbye, genious.
「さよなら、天才刑事」

このへんはやっぱり、かっこいい。

犬の登場

 この「黒のエチュード」で初めて犬が登場する。コロンボの説明では「溺れかけたところを助けた」事になっている。名前はまだつけていない。オードリーという女の子に「”Fido” という名前はどうかな?」って聞いて、「ダサい」って即座に却下される。ちなみに、”Fido” (発音は「ファイド」というのは、よくある犬の名前らしく、「忠犬」みたいな意味らしい。

 この犬はバセット・ハウンドという種で、昔から犬を買うんならバセットハウンドって思っていたけど、大きくてなかなか飼うの大変そうだし、結局ウチはトイプードルになってしまった。

その他

★ハリウッド・ボウル

 今回見るまで全然気づかなかった。このコンサートが行われる場所は、かの有名な「ハリウッド・ボウル」だった。一般的に有名かどうかはわからないけど、ビートルズ好きには馴染みの場所。昔、ここのライブがレコードで出ていた。CD化はされていない。ビートルズの演奏シーンは見たことあるけれど、全景はたぶん映っていなかったので、今回確認できてよかった。結構小さいし、オープンエアでなかなか趣のある場所だなと思った。

★クラシック

 前作「パイルD-3の壁」では、カントリーとクラシックが取り上げられていて、その中でコロンボはクラシックが好きだってことは示されていたけれど、今回はカミさんのためにサインまで貰う。
 犬を診てもらう医者もクラシック好きでこんなセリフを言う。

My wife doesn’t like music.
She watches murder mysteries. So whenever the concert’s on, I work late.
カミさんは音楽が嫌いでね。ミステリ番組ばっか見てる。だから、コンサートがある時は遅くまで仕事することにしてるのさ。

 たぶん、彼の奥さんはクラシックよりも「刑事コロンボ」の方が好きだったんだろう(?)。

 そして、コロンボがピアノを弾くシーンがある。弾いているというよりも叩いていると言ったほうがいいかもしれないかしれない。

★コロンボとお金

 ベネディクトにお金のことをいろいろ聞くシーンがある。コロンボってお金に無頓着そうなイメージなので意外だ。ベネディクトの豪邸に言った時、固定資産税を聞いて瞬時に計算して豪邸の価格をほぼ言い当てる。まぁ、頭が良くなければ、カンだけでは名刑事にはなれないだろう。

 ちなみにコロンボの年俸が11000ドルということもわかる。今のレートだと120万程度。当時のレートが1ドル360円としてもとても高給取りとは言えないんじゃないかな。

★脇役

 先にあげた獣医もそうだけれど、こういう物語をふくらませる人物も大切だと思う。

 トランペット奏者は、育ちもあまり良くなく、場末でジャズをプレイしているところが泣かせる。しかも本気で殺されたジェニファーを愛していたのに、むげに振られてしまう。
 ジェニファーの友人だったオードリーという女の子も妙にませていて面白い。

★ boutonniere

フランス語で、「ブートニエール」と言うらしい。事件解決の肝となる襟につける花のこと。


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