プチ・シニアの明るいひきこもり生活

刑事コロンボ「悪の温室」- Greenhouse Jungle

      2015/08/30

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If I forget this, my wife will kill me.
「これ忘れたら、カミさんに殺されちゃうんで。」

greenhouse

 第11作。
 「指輪の爪あと」では、被害者の夫だったレイ・ミランドが犯人役。その時に書いたが、この人はヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!」の犯人だった役者。この人はポケットに手を入れて立つのが好きなようだ。
あまり印象に残っていなかった作品だったが、トリックも含めてそれほど悪くない。だけど、全体的にインパクトは弱いと思う。印象が薄いのはそのせいかも。
 ただ、見方によっては渋くていい、っていう言い方もできるかもしれない。

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 今回も、新しい試み、というか、要素が盛り込まれた。コロンボの部下だ。コロンボはこれまで常に一人で捜査をしてきたけど、今回は部下が加わる。とは言っても、コロンボは彼をいいようにあしらって、結局いつものような単独捜査を続けるんだけど。

プロット

 トニー・グッドウイン(英語ではグッドランドとなっている)の妻は浮気症。トニーはお金で彼女が自分のもとに帰ると信じている。彼は相応の生活を送っているが、彼受け継いだ莫大な遺産は信託預金となっていて、特別な事情以外は手を出すことができない。彼の叔父で、蘭の栽培家であるジャービスは、トニーにある提案をする。誘拐をでっちあげ、その身代金を特別な事情として手に入れる作戦だ。トニーはこの提案に乗るが、実はジャービスはトニーを殺し、身代金を手に入れようとしていたのだった。

登場人物

 この作品がインパクトに欠ける原因の一つは犯人のキャラが弱いからだろう。名優レイ・ミランドと言えど、強烈な印象を残す犯人像を作り出しているとは言い難い。これは、レイ・ミランドのせいというよりは脚本のせいなんじゃないだろうか。蘭の栽培家というのもちょっと地味かもしれない。私があまり花に興味が無いせいでそう思うのかもしれないけれど。
 この中では一番キャラが立っているのは、被害者の奥さんかもしれない。堂々と浮気しているし、最後に逮捕された時も冷静にあきらめている様子だ。コロンボは彼女をこう評している。

You are not a hypocrite.「奥さんは自分の気持ちに正直な人だ」

 その他の登場人物、殺される夫トニー、奥さんの愛人ケン、トニーの愛人ウエスト、そして、部下のフレディ、キャラとしてはみな中途半端な描写に終わっている気がする。

動機

 殺人の動機が今回ははっきりとしていない。ジャービスが金銭的に困っているとか、特に欲が深いとか、そんな描写はどこにもない。彼は、単に金のために殺したのではないように見える。

 ジャービスの言動で目立つのは、浮気症のトニーの妻への「敵意」だ。眼前でもかなりキツイことをはっきりといっている。さらに、次のような会話では、興奮を抑えられない(そこをコロンボにつっこまれるわけだけれど。)それほど、彼女を嫌っている。

Jarvis : Well, that was to make her believe the letter when she got it. She’s a very hard woman to convince of ANYTHING, Lieutenant.
Columbo: Mmm. I wonder how they knew that.
「そりゃ、そうしないと彼女が手紙を受け取った時に信じないからさ。彼女にとても疑り深い女なのさ。」
「でも、どうして犯人がそれを知っていたんでしょうねぇ』

 さらに、浮気されながらもあくまで妻を自分の元に取り戻そうとするトニーの「なさけないなさ」にも我慢がならない。
こんな台詞がある
 

Blood is thicker than martini.
「血はマティーニより濃いってことさ。」

 冗談めかしていっているが、これは本音だろう(この martini は物質的な欲望の比喩だと思う)。つまり、トニーはいとこであり、当然愛情を持っているけれど、それが故に彼の「なさけなさ」に我慢がならないのだと思う。
 この「敵意」と「情けなさ」、そして「金」、この3つが絡みあった動機なのだと思う。

その他

意地悪なコロンボ

 相手をけん制するための意地悪なセリフはコロンボの得意とするところだけれど、今回はちょっとキツイものもあった。
 身代金の受け渡しを終え、疲れていると言うジャービスに

Columbo : Have a pleasant night.
Jarvis : I presume that’s gallows humor.
「楽しい夜を」
「それは、随分悪意のある言い方だと思うがね。」

 奥さんに対しても、愛人のケンといる場面で、

Anyway, she said that, uh, this mysterious lover of yours, some guy with a deep suntan, that he’d go away and get out of your life forever if your husband gave him $50,000.
I’m sure it’s just malicious gossip.
「とにかく、彼女が言うには、その謎の愛人は、よく日に焼けている人物らしいんですが、もし夫が5万ドル暮れるなら別れるって言ったそうなんです。ま、悪意のあるただの噂話だと思いますがね。」

コロンボがビリヤードのコツを教えてくれる

Y’know what this whole game is?
It’s all with the wrist, you just gotta keep that loose.
「このゲームで一番大事なのはなんだかわかります?」
「手首なんですよ。手首を柔らかくしてなきゃダメなんですよ。」

ジャギュア

 ジャギュアが前回に引き続いて登場。スタッフの誰かがが好きなんだろうか、それとも、当時は、金持ちの乗る車の代名詞的なものだったんだろうか。
コロンボとは関係ないけれど、Jaguar は、カタカナでは「ジャガー」と書くことが今では多いのかもしれないけれど、より英語に近いのは「ジャグアー」だと思う。ちなみに「ジャギュア」って私が書くのは昔読んだ某小説家の作品の中で使われていてすごく印象に残っているから。

トリビア?

◯ 冒頭で、コロンボが斜面を滑り落ちて転ぶ場面は演出ではなくて実際に転げ落ちたらし。

◯ 部下のフレデリック・ウィルソンは、この後もう1作出てくるけど、その時は名前が、ジョン・ウイルソンになっているらしい。

◯ なぜか、元の英語版では名前が Goodland(「グッドランド」)なのに、吹き替えでは「グッドウイン」になっている。


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 - いまさら刑事コロンボ

 

Comment

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  1. […] とか、そんな描写はどこにもないのです。 彼の叔父で、蘭の栽培家であるジャービスは、トニーにある提案をします。 [引用元] 刑事コロンボ「悪の温室」- Greenhouse Jungle | Hippie Go Lucky […]

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