プチ・シニアの明るいひきこもり生活

刑事コロンボ「構想の死角」

      2015/08/25

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 第3作。 シリーズとしてはこれが第1作になるらしい。

(英語の勉強のために残したメモを別記事にしました)

 第1作高名な精神科医、第2作敏腕女性弁護士と明らかに「有能」な人物が犯人だった。第3作では表面的には売れっ子推理作家(二人組の1人、フランクリン)だけれど、実際はパブリシティ担当でしかないという、それほど有能とは言えない人物が犯人になる。有能とは言えない、と書いたけれど、彼は、今の言い方をすれば「コミュニケーション能力は高い」、その点は確かに有能だ、ただ、そのコミュ力だけで世間をうまく渡ってきたという感じだろうか・・。

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 彼はコロンボに対して、いかにも上から目線の会話に終始する。まるで、「推理」能力では当然自分の方が優れているというかのように。ただ、そのせいで、逆に「有能じゃない感」をプンプンまき散らしているように感じる。そう感じるのは、私達が普段実生活で、実際には大したことないのに大物感を醸し出そうとする人物を多々見ているからだろうか・・・、というのは冗談で(半分?)、もちろんそういう演出がうまく行ってることってだろう。最後のトリックのためには、彼がそれほど有能ではないということは必須条件だから。

 前2作では、コロンボのしつこさに辟易しながらも、犯人は二人共「あなたは大した刑事だ」とコロンボの有能さを認めざるを得なくなるのだが、今回はそんなシーンはない。一般的に「敵」の有能さに気づかないというのは、「無能」を認めていることと同義だろう。

 とまぁ、かなりこの犯人をボロクソに書いてきたんだけれど、実は最後の最後にちょっと彼に同情してしまったのだ(詳細後述)。このあたりは、脚本がうまいなぁと思う。正直言って最後のセリフを聞くまで、この作品は今ひとつだなぁって思っていたのだけれど、最後の5分の落とし方は秀逸だと思う。それまでのシーケンスはこの最後の5分のためにあったかのようだ。

コロンボ、間違える!

 確かに事件は解決できた。ただ、あのコロンボが間違えを犯したという意味で貴重な作品だ。さらに言えば、ある意味、間違えなければ犯人にはたどり着けなかったかもしれなかった。

 第1の殺人は完璧なのに、第2の殺人は杜撰過ぎる、だから、第1の殺人は殺された相棒のアイデアで、そのメモを見つければ、フランクリンが犯人だと立証できる、というのがコロンボの推理だった。確かにそのメモは見つかって一件落着となるのだけれど、実際は第1の殺人も「構想」はフレミング自身のものだったのだ。完璧すぎる殺人だから、フランクリンにできるはずはない、というコロンボの推理は間違っていたということになる。
フレミングは最後にこう言う。

You wanna know the irony of all this? That is my idea, the only one I’ve ever had.
「皮肉なもんだな、あれは僕のアイデアさ、僕のでいいのはそれだけだ」

 文字通り、「皮肉」な結果だろう。彼のアイデアを「完璧」とまで評されながらも、そのせいで犯人と立証されてしまったのだから。

 実は、このセリフの少し前に、かなり強い口調でコロンボはフランクリンに言っている。

How could a man with no talent for mysteries make up such a clever murder?
「ミステリーの才能のない人間が、あんな巧妙な殺人計画を思けるはずがないんだ」

 ということは、逆にフランクリンには才能があったかもしれないということになる。もしかしたら、相棒の Jim の才能がすごすぎて、そのことに気づけなかったのかもしれない。気づいていれば殺人を犯す必要もなかったかもしれない。それも皮肉の一つかもしれない。

 コロンボに犯人だと暴かれた後のフランクリンは、これまでの高飛車な態度は全く消え去り、コロンボに尋ねる、これこそが唯一の救いであるかのように。

You gotta admit I had you going for a while, didn’t I?
「(吹き替え)謎を解くのに頭を痛めただろう?」

コロンボは” Yes, you did” 「はい」と答える。

その他

◯ 有名だけど、ラサンカ婦人にあげる本のタイトルが第1作めの「殺人処方箋」。ちなみに彼女はキャラが立っていてとてもいい。

◯ コロンボが “I could never figure those things out.”コロンボがミステリーの犯人がさっぱり見つからないって言っているのが面白い。

◯ コロンボの鋭い指摘で、犯人が言葉を返せないシーンというのが「定番」のように毎回挿入されるけれど、今回は、まず別荘のあたりのナイトライフを尋ね、フランクリンが「何もないよ、寝るだけさ」と答えるのを待ってから、こう尋ねる。

“Well, last night I called to tell you that I was coming. But there was no one at home.”
「(吹き替え)あなたの都合を聞こうと思って昨夜電話したんだけど、誰も出ませんでしたよ。」

◯ タイトルについて。原題は”Murder by the book” 邦題「構想の死角」。シリーズ中いくつかの邦題には、いただけないと思うものもあるんだけど、これは圧倒的に邦題が素晴らしいと思う。

◯一緒にお酒飲むシーンで、英語では “bourbon” なのに字幕は「ウイスキー」、なぜだろう?ちなみに「殺人処方箋」でもバーボンだったけれど・・。(精神科医に「きっと警部はバーボン派だろう」って推理されていた。)

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Comment

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  1. すな より:

    はじめまして。
    今月よりNHK BSにてコロンボが再放送されており、そのネタを探していて貴ブログにたどり着いた次第です。(ちなみに明後日はこの「構想の死角」の放送日です)
    ”シリーズ中いくつかの邦題には、いただけないと思うものもあるんだけど、これは圧倒的に邦題が素晴らしいと思う。”
    …という点に関しては同意見で、例えば「溶ける糸」は半分ネタバレですよね。「時限殺人」とでもしておけばよかったのに、って。
    で、この「構想の死角」ですが、(ご存じかも知れませんが)聞いた話では森村誠一の推理小説「高層の死角」からヒントを得たらしいですね。「高層の死角」は、私が高校生の時に本屋で何気に手に取って購入、その後、森村誠一にハマった記念碑的な作品だったりします。
    なので、(かのスピルバーグが演出したという)この「構想の死角」も、自分によっては印象深いエピソードなのです。
    長々とコメントをし、失礼しました。

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