プチ・シニアの明るいひきこもり生活

騙されて気が付かないのが一番幸せだよね、と思いながら「ダウト 〜あるカトリック学校で〜」を見る

      2016/01/31



 このタイトルは、ダメだと思う。もう少しで見逃すところだった。もととなった戯曲の「ダウト 疑いをめぐる寓話」というタイトルの方がずっといい。ストーリーは、戯曲の方の wiki が完結で分かりやすい。

 1964年のニューヨーク・ブロンクスのミッション・スクールを舞台に、厳格な校長が抱いた若手神父と黒人生徒との間の不適切な関係に対する「疑い(Doubt)」を通し、人間の心の闇を浮き彫りにさせた会話劇である。 (wikipediaより)


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 メリル・ストリープ Meryl Streep 演じる厳格な校長アロイシアスとフィリップ・シーモア・ホフマンPhilip Seymour Hoffman 演じる進歩的な神父。二人共演技の巧さでは定評がある。うまいのは分かるけど個人的にはあまり好きではなかったメリル・ストリープも今回は文句なしによい、役柄のせいもあるんだろうけど。フィリップ・シーモア・ホフマンはいつもどおり良い。惜しい人を亡くした(2014年2月2日没)。二人に絡むシスター・ジェームズ役のエイミー・アダムス Amy Adams という女優(知らなかったけど)もすごくよい。

 タイトルの通り、これは「疑惑」をテーマとした映画であり、描かれる「疑惑」は真相は明かされず、「疑惑」のまま終わることになる。ラストで「疑惑」を抱いた側がそのために苦しんでいる姿を描いて終わっている。真相はどっちなんだろう、とつい気になってしまうけれど、明らかに脚本はあえてどちらとも取れるように書かれているので、観客がどちらかに決めようとするのは意味が無い。

 面白いなと思ったのは、校長アロイシアスがフリン神父に「疑惑」を抱く理由が些細なことだからだ。
シスター・ジェイムズが興奮してこう指摘する。

You just don’t like him! You don’t like it that he uses a ballpoint pen. You don’t like it that he takes three lumps of sugar in his tea. You don’t like it that he likes FROSTY THE SNOWMAN. And you’re letting that convince you of something terrible, just terrible!
「あなたは彼が嫌いなんです。彼がボールペンを使うのも、紅茶に砂糖を3つ入れるのも、「雪だるま」の歌が好きなのも、あなたは嫌いなんです。それだけで、あなたはとても恐ろしい考えに捕らわれているんです、恐ろしい考えに。」

 かなり極端な話に聞こえるけれど、人間とはそういう生き物かもしれない。

更に、

SISTER JAMES:
It is unsettling to look at people with suspicion. I feel less close to God. 「疑いを持って人を見るのは、居心地が悪いのです。神から離れていくような感じがするのです。」
SISTER ALOYSIUS:
When you take a step to address wrongdoing, you are taking a step away from God, but in His service. 「悪い行いを正そうと一歩踏み出すことが、神から一歩遠ざかることになったとしても、それは神のためなのです。」

 なかなか強烈なセリフだ。このセリフがエンディングの校長アロイシアスの泣きながら漏らす苦悩のセリフへと繋がっているのだと思う。

“I have doubts! I have such doubts!”「疑いがあるのよ、言いようもない疑いの気持ちが・・・」

いやぁ、しかし、メリル・ストリープ上手だなぁ。


 この映画では、二度説教が行われ、重要な役割をしている。

 最初の説教では、「信仰への迷い(疑い)」について話、こう締めくくる。

Doubt can be a bond as powerful and sustaining as certainty.
「疑いは、確信と同じくらい強力な絆となりえるのです」


 なかなか意味深である。「絆」となると言っているのだ。

 二度目の説教では、ゴシップについてとても秀逸な比喩を用いて話している。これは明らかに校長アロイシアスに向けてのものだ。長くなるけど、面白いので一部引用しながら紹介しよう。

A woman was gossiping with a friend about a man she hardly knew– I know none of you have ever done this–
「ある女性がよく知りもしない男性について、友達と噂話をしていました。もちろん、ここにいるみなさんはそんなことはしたことがないでしょうが。」

 皮肉も効いている。

 その夜、その女性は夢の中で巨大な手に髪を引っ張られる夢を見て、罪の意識に捕らわれる。早速彼女は告解しに行き、自分が悪いことをしたのだろうか?と尋ねると、オローク神父に厳しく叱られる。許しを与える前に、神父は彼女に向かって、家に帰り、枕を持って屋根の上に登り、ナイフでその枕を切り裂きなさい、そうして、またここへ戻って来なさいと告げる。女性が言われたとおり枕を切り刻んで神父のもとに戻ると、神父はどうなったかと尋ねる。彼女はこう答える、「枕の中の羽根が風で四方八方に飛び散って行きました。」

すると神父はこう言う。

“Now I want you to go back and gather up every last feather that flew out on the wind!” 「それでは、家に帰って風に飛ばされた羽根を一枚残らず集めてきなさい。」
女性は答える。
“Well,” she said, “it can’t be done. I don’t know where they went. The wind took them all over.”「それは無理です。どこへ飛んでいってしまったかわかりません。風がそこら中に運んでいってしまったのですから。」と彼女は答えた。


そして、神父が言う

”And that,” said Father O’Rourke, is gossip!” 「それこそが、」オローク神父は答えた「ゴシップなのだ。」


まぁ、他にも面白いセリフやシーンもあるけれど、長くなるのでこんなところで・・・。

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