プチ・シニアの明るいひきこもり生活

恥ずかしながら「奇跡の人」はヘレン・ケラーのことかと思っていた・・・

      2016/01/31

 「奇跡の人」である。

 まさか自分がこの映画を見るようになるとは思ってもいなかった。おそらく私を知る人間のほとんどは驚くだろう。「どうしちゃったんだ?」



 私は「ヒューマン」と形容詞がつく映画にはほとんど手を出さなかった。だからといって、私という人間の中に「ヒューマン」な要素が少ないかといえば、そんなことは全くなくて、むしろ人一倍「ヒューマン」であると思っている。ただ、ちまたに出回っているあまりに安っぽいヒューマン・ドラマに辟易して、意図的に「ヒューマン」ではない方向性を打ち出していただけなのだ。

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 おそらく、若さゆえ未熟さのために私は少々行き過ぎたのだと思う。「あなたは冷たい。カミソリのようだ。」と真顔で言われたことまであった。

 そんな、私が今回番組表でこの映画を見つけて、おっ、見てみようかなと思いたった理由は、「そういえば最近『ヘレン・ケラー』の名前って昔ほど聞かなくなったなぁ」と思ったことだった。

 昔は、だいたいこの手の苦難や困難を乗り越える美談的なテーマとして、この映画は圧倒的認知度を誇っていた気がする。ところが、最近はそうでもない気がする、この手のテーマに合致する人物がやたらと「発掘」されたり、あるいは「出現」したため(最近で言えばマララちゃんとか)、ヘレン・ケラーを持ち出す必要がなくなったのかもしれない。あるいは、高校野球で必ず出てくる「感動的な逸話」のようなより身近なもの方がニーズが高まっているのかもしれない

 要するに、まぁ、飽きられたのかな、とも思う。「ヒューマン」と呼ばれる分野で、「飽きる」っていうのはよろしくないんじゃないかなと私などは思うけれど、まぁ、人間は平和にだって飽きる(気がする)。

 だからこそ、ひねくれ者の私は、今見ようと思った。

 知らなかったのだが、監督はアーサー・ペン Arthur Penn だ。あの「俺たちに明日はない Bonnie and Clyde」の監督だ。私が中学生時代に一番影響を受けた映画だ。

 そして、サリバン先生役はアン・バンクラフト Anne Bancroft だ。こちらも大好きな「卒業 The Graduate」ではなかなか難しい母親役だった。大人の女性というのは、あぁいう人なのだと私は長らく信じていた・・・。

 昔の映画を見ていつも思うのは、すごく脚本が練られているなぁ、ってことだ。今みたいに次から次に、この程度で作ればこの程度の観客が入ってこの程度の収入が見込める、っていうような打算はあまり感じない。1本の映画にかける思いや時間は圧倒的に多かったんじゃないだろうか。

 さて、映画は面白かった。それほど、感動的というイメージがないのは、映画がそれほどウェットに作られていせいかないか、私が鈍感なのかのどちらかだと思う。

 テーマは、私は「教育」と「愛」だと思った。全然興味をもったことのなかった私は、この映画は「ヘレン・ケラーが三重苦を克服してゆく物語」だと思っていた。

 見たら、ぜんぜん違う。これは、サリバン先生の物語。教師の物語で教育がテーマ。ヘレン・ケラーは完全な脇役。考えてみれば、原題は”The Miracle Worker” だから、メインはサリバン先生のことだってすぐ分かるが、「奇跡の人」だとなんだかヘレン・ケラーのことだと勘違いしてしまう。きっと私だけじゃないと思う。

 テーマが教育ということで、ちょっと話を戻すと、この映画が最近あまり取り沙汰されないのは、ここに描かれている「体罰」のせいじゃないだろうか。サリバン先生のやり方は、現在の欧米、いや、日本でも絶対に許されないだろう。昔はこのくらいの体罰は当たり前だったから、焦点は感動的エピソードに絞られていたわけだが、今はその前の時点でアウトになるんじゃないだろうか。

 あまりに、やり方が激しいので、父親はサリバン先生に聞く。

Captain Keller :Miss Sullivan, do you like the child?
Sullivan :Do you?

 サリバン先生、あなたはこの子を好きなのかね?
 あなたの方こそどうなんです?

 サリバン先生は、甘やかすのが「愛」だとは思わない、と反論するわけだ。

 そして、こう言う。

It’s less trouble to feel sorry than to teach her anything…

「可哀想だと思う方が、何かを教えるよりずっと楽ですものね。」

 顰蹙をかうのを覚悟で書くが、私はこの映画を見ながら、我が愛犬のことを思い出した。私には、生涯を持つ子供どころか、子供自体いないので許して欲しいと思う。ヘレン・ケラーの父親の態度が、私の愛犬に対する態度とほぼ同じだったからだ。結局、私はあきらめた。

 私にはサリバン先生はいなかったから、あきらめてしまった。だから、身にしみる。

 今でも私が後悔するのは、いくつかのしつけ本にかかれていた「ちゃんと躾けたほうが、その犬にとって幸せな生活が送れる」という記述だった。この話に私は同意する。私はそのための困難さを乗り越えられなかった。

 ただし、人間の場合、今の教育を考えると、このような先生と生徒の関係は成り立たない。教師の情熱という意味でもそうだし、「僕達のムッシュ・ラザール先生」の時にも書いたが、今は生徒に触れることは一切許されていないのだから。だからこそ、あの映画ではたかが「ハグ」であれほど感動的なシーンを演出できたわけだが。

 そんなわけで、この映画は私に少々ほろ苦い思いをもたらせた。




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 - 遅れてきた映画鑑賞

 

Comment

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  1. モッチャン より:

    へぇ~。からフ~ン。
    奇跡の人ってヘレン・ケラーの事じゃ無かったんだ!
    この文章を読んで納得です。

    今日は小田和正のコンサートセットリストから始まって、YouTubeのビリージョエルからイーグルスのホテルカリフォルニアそしてショッキング・ブルーの悲しき鉄道員の「日本語訳付き」を見てここに到着。
    ちょっとハマってしまいました。
    なかなかどの項目も実に面白い!

    • hotbeard より:

      モッチャン、ありがとうございます。

      文章的に若い人でしょうか?。若い人に受けそうな内容は全くないって思っていたので、驚き、嬉しく思います。

      私は、ショッキング・ブルーは「ヴィーナス」じゃなくて、「悲しき鉄道員」なんですよ。中学生の時、EP(今の人は知らないだろうけど、4曲入りシングルっていうレコード)を買ってよく聞いてました。ジャケットに写っている女性(ボーカル)の人がなんかエキゾチックな感じで、ドキドキしましたね。
      しかし、原題の「鉄道員とは結婚するな」ってすごいタイトルだなって思います(あれ、どっかに書いたかな。)

      • モッチャン より:

        「悲しき少年兵」っていうのもありましたね。
        始まりの部分がなんか記憶に残っています。
        英語も分らずカタカナで聞き覚えで歌っていたような
        誰が歌っていたのかしら?

        悲しき○○結構ありましたね。

        • hotbeard より:

          モッチャンさん、こんにちは。

          「悲しき少年兵」は知りませんでした。
          「悲しき雨音」とか「悲しき天使」とかが一番有名でしょうか?

          (前回、若い方って推測しましたけど、「悲しき少年兵」のくだりを読むと私の早とちりだったでしょうか・・。すみません、って謝るのがいいのかわかりませんけど、すみません。)

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