プチ・シニアの明るいひきこもり生活

最近は「普通」の範囲が広すぎて困よねって思いながら「普通の人々」を見た

      2016/01/31

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 ロバート・レッドフォードという俳優をそれほど好きではなかった。「明日に向かって撃て」はすごく好きだけれど、別に彼が出ているからではなかったし。だから、彼の監督作といっても特に食指が動かなかった。

 ただ、サンダンス映画祭を主催したのが彼だと知ってから少し気になり始めた。サンダンスは、あの「サンダンス・キッド」という役名から来てるということにしばらく気づかなかった。

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 最近はやらなくなってしまったようけど、NHKが協賛していたらしく、以前はサンダンス映画祭の時期になると受賞作をBSでまとめて放送していた。何気なく見たら、面白い作品が多くて、初めてNHKの受信料を払っていることに納得できた。アカデミー賞の大騒ぎに比べると、日本での紹介のされ方は(特に最近は)あまりにも少ない。インディーズ系だから仕方がないって言われればそれまでだけど・・。CNNやBBCは毎年必ず特番などで様子を伝えている。

 個人的には、アカデミー賞とったからって映画を見に行くことはないが、サンダンス映画祭の受賞作なら行くかもしれない。簡単にいうとそういうことだ。

 少し前に、シネマテーク系の映画館によく行ったことがあった。何も調べずに行って、時間にあう映画を見る、洋画でも邦画でも。予備知識も全くなし。それでも、その時見た映画は、すべて面白かった。良質な映画が常に上映されているってすごいなって思った。

 サンダンスも、それに近くて、どれを見ても面白いなと思った。

 さて、今回、この「普通の人々」を見て、監督ロバート・レッドフォードは、俳優ロバート・レッドフォードよりも圧倒的に好きになった。

 彼は、派手なスター俳優だと思っていたから、こんな、繊細な、感情の機微を上手に描けるなんて思っていなかったからだ。大変失礼しました、って頭を下げたい。この映画は1980年のものらしいので、随分気づくのが遅れたことにたいしても頭を下げたい。

 テレビ番組表の番組概要には

「平凡で安定した生活を過ごしていたある一家が長男の死をきっかけに崩壊していく様子を描く」

となっていた。

 これはすごく乱暴な説明だけれど、所詮この映画のストーリーを詳細に書いたところで、何も伝わらないと思うので、余計な先入観を与えなくていいのかもしれない。ただ、「崩壊していく」は明らかに間違っている。むしろ、崩壊から回復していく様が描かれている。

 登場人物について、もう少し詳しく説明すると、

・兄をなくしたのは自分のせいだと思い込んでいて、自殺未遂までしてしまう弟(コンラッド)
・とにかく元の平穏で幸せなは家庭に戻ろうと息子にも妻にも気を使う父親
・兄の死を未だに引きずり、原因となった息子を未だに許せない母親

となる。

 小さなエピソードを積み重ねて、この微妙な家族関係を、そして、その関係が変化していくさまを丁寧に描いている。

 例えばこんなシーン。

 外で横になっているコンラッドに気づいた母親が、寒くないかと心配して声をかける。珍しく、会話が弾むのだが、コンラッドが亡くなった「兄は犬が飼いたかった」と口にした瞬間から、母親は別の話に無理やり変えようとし、コンラッドは意地になってその話を続けようとし、もはやお互いが相手の言葉を無視して言葉をぶつけあう。最後に、コンラッドが大声で犬の吠える真似をし、母親は無言でその場を去っていく。

 私が好きなのは、このシーン。

 合唱で知り合った彼女と初めてデートをした時、酔っ払ったハイスクールの知り合い達が二人を見つけ絡んでくる。無理やり立たされ、店の帽子をかぶらされた彼女は嬉しそうに笑ってしまう。コンラッドは、そのことに腹をたてる。彼女が、嫌がらなかったことに腹をたてるのだ。(このシーンはラストにまた引用されて、誤解だったことがわかる)

 と2つのシーンを書いてみたけれど、読み返してみるとその面白さはほとんど伝えられてない。主に私の文章力のせいだが、文章に伝えづらいほど、些細な感情の変化を丁寧に描写している映画だと言うこともできる。

 ラストでは、「変わろう」ともがいていたコンラッドと家庭のためには父親には安息が訪れ、「変わること」を頑なに拒否した母親だけが家を出て行くことになる。

 最後に、ドナルド・サザーランドって、ちょっとふざけた色男風の役柄が多いので、今回のシリアスな演技は意外だった。

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 - 遅れてきた映画鑑賞

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