プチ・シニアの明るいひきこもり生活

アーティストとしての覚悟が問われるウッディ・アレンの「ブロードウェイと銃弾」

      2016/01/31

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I could love a man if he’s not a real artist…
but I couldn’t love an artist if he’s not a real man.
「本当のアーティストだからって男を愛することはできるけど、
本当の男じゃなかったら、アーティストであっても愛せないわ。」




「ブロードウェイと銃弾( Bullet Over Broadway )」である。これも面白かった。かなり面白かった。

 この映画のテーマは「アーティストであること」だ。成功を夢見る脚本家ジョンが、「アーティストであること」であることがどういうことなのかを考え、最終的に「人間であること」を選択するまでの過程が描かれている。

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(以下、完全にネタバレです。未見の人はご注意ください)


 もちろん、彼はまだ売れていないとはいえ(あるいは、売れていないがために)、自分がアーティストであることを疑っていない。
 冒頭、彼はこう言って、アーテイストとしての矜持を語る。アーティストのエゴと言っても良いかもしれない。

I’m an artist, and I won’t change a word of my play…
「僕はアーティストなんだ、自分の脚本は1言だって変えるつもりはない」


 そんな彼に成功のチャンスが訪れる。といっても苦渋の選択だ。ブロードウェイで公演できる代わりに、マフィアの愛人オリーブというまるで素人同然のを出演させなければいけないのだ。

It’s a deal with the devil.
「悪魔と取引してしまったんだ。」

 成功のために、アーテイストとして矜持が打算によって崩れ始める。 

 リハーサルに入ると、大御所の女優ヘレンに恋をし、彼女のアドバイスに従い簡単に脚本を変えてしまう。あげくに、オリーブの用心棒チーチにまで口出しされ、もう「やめる」とまだ言い出す。

 ところが、実はそのチーチの出してくるアイディアが素晴らしい事が気づく。

Suddenly I’m taking suggestions from a strong-arm man with an I.Q. of minus 50.
「急に、IQマイナス50の乱暴者の提案を受け入れようとしているんだぜ。」

 結局、ジョンは積極的にチーチに相談し、脚本はまるで共同作品のように変ってしまうが、周りからは絶賛される。チーチは「俺の作品」とまで言い出す。ジョンは彼のほうが脚本の実力があることを認めざるを得ない。

 私は、このくだりを見ていて三谷幸喜の「笑の大学」を思い出した(鑑賞記事)。あの作品では、笑いのことなど全く知らない検閲官のダメ出しによって脚本が良くなっていくというストーリーだった。この「ブロードウェイと銃弾」では、演劇のことなど全く素人の殺し屋が脚本を良くしていく。

 調べてみた。「笑の大学」のラジオ版初演が1994年。「ブロードウェイと銃弾」のアメリカ公開が1994年10月(日本公開は1995年)。いわゆるシンクロニシティというやつだろうか・・。

 さて、ここから、映画はテーマに深く切り込んで、ぐっと面白くなってゆく。

 なんと、そのチーチ、マフィアの用心棒で殺し屋でもある男が、アーティスト魂に目覚めていくのだ。彼は、オリーブが「自分の作品」(!)を貶めていることに我慢ができなくなる。そして、最終的には、作品のために、ボスの愛人であるオリーブを殺してしまう。
 つまり、彼は、アーティストとして自分の作品を傷つける存在を許すことができず、殺人まで犯して排除しようとしたわけだ。

 結局、ブロードウェイでの公演は大成功に終わるが、チーチもオリーブを殺したことがバレて、ボスの手下に殺されてしまう。

 そして、ジョンは思うのだ、自分はアーティストではないと。作品のために、殺人までできない、アーティストである前に人間なんだと。

 さらに、ヘレンと浮気していたジョンだが、売れない時から自分を支え愛してくれた恋人エレンのことを本当は愛していることに気づく。

There’s two things of which I’m certain.
One is that I love you. Two is that I’m not an artist.
「2つ確かなことがある。ひとつは君を愛してるってこと、もう一つは、僕はアーティストなんかなじゃないってことさ。」

 最後に、「ブロードウェイと銃弾」というタイトルについて。
 チーチは公演中に舞台裏で銃で殺される。公演中にその銃声が鳴り響き、観客にも聞こえるのだが、新聞の批評蘭には、この遠くから聞こえる銃声が素晴らしい効果をあげていたと絶賛される。チーチは絶命の時まで「自分の作品」のために貢献したのだと捉えることもできるけれど、ここは「批評」なんてこんなものだよっていう、ウッディ・アレンの皮肉だろうなぁ、と私は思う。

 ジョン役はジョン・キューザック。あまり彼の作品は見てないけど、割と好きだな。

 独特の高い声のオリーブ役はジェニファー・ティリー。”Fabulous Baker Boys” (邦題は余りにもヒドイので書かない)っていう映画に端役で出ていたのを覚えているくらいだから、やはり個性的。

 ヘレン・シンクレア役には、ダイアン・ウィースト。この役で彼女はアカデミー助演をとったらしい。実は私は昔から彼女が大好きなんだけど、これはちょっとオーバーアクト気味かっていう気がした。まぁ、役柄的にあえてしているんだろうけど。もっと地味で繊細な感じの役のほうが好きだけど。ちなみに、この映画の中では、”Don’t speak” を連発していてすごく面白かった。

 ところで、ウッディ・アレンである。この間「ギター弾きの恋」を見てから、彼の作品を見なくなっていた自分を反省し、未見の作品はなるべく見るようにしようと思った。幸い、イマジカBSで特集でもあるのか彼の作品を集中的に放送したので録り溜めた。





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