プチ・シニアの明るいひきこもり生活

ただの「夢と犯罪」と「ウッディ・アレンの夢と犯罪」では与える印象が全く違うという驚愕の事実

      2015/08/31

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Father: What the hell do you need a boat for? And how are you gonna pay for it?
Ian: It’s secondhand.
Father: So you’re buying someone else’s headaches.

父:なんでまたボートなんか買うんだ?それに、どうやって金は払うんだ?
イアン:中古なんだよ。
父:つまり、他人の頭痛のタネをわざわざ買いうけようってわけか?


 ウッディ・アレンの「ウッディ・アレンの夢と犯罪」を見た(ややこしい)。

 うーん、ちょっと残念だった。基本的に、あんまり残念な映画については書くのをやめようと思っているんだけど(結構いっぱいあるんですよ、実は)・・・。

 とはいえ、ウッディ・アレンである。ファンとしてただパスにするのは忍びないので、やはり書くことにした。

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 一番不満な点は、ウッディ・アレンっぽいところがあまり見えなかった点だ。何も知らないで見ていたら、ウッディ・アレンの作品だって気づかなかったんじゃないかな。ファンが一番求めているのは、傑作かどうかよりも「ウッディ・アレンっぽさ」なんじゃないかなぁ・・。

 それに、なんか、あんまりひねりがない。やっぱり、ハッとするような捻りが欲しい、ファンとしては。以前見た、「ブロードウェイと銃弾」「ギター弾きの恋」や、「セレブリティ」には、作品の出来は違っても必ずひねりはあった。

 それがない。

 でも、もちろん、面白いところもある。

 この映画を見て私が思い出したのは、内田樹が書いていた「叔父さん論」だ。私の理解している範囲で簡単に説明すると、父親と息子の関係に、叔父という父とは異なる資質が人生に関わってくることによって、息子の成長に影響を与える、という考え方だ。父と叔父のキャラクターが違えば違うほど、息子の「大人の男」というイメージの選択肢、幅が広がっていく。内田樹は一番わかりやすい例として「寅さん」シリーズをあげていた。うむ、確かに。

 実は、私も同じよう意味で、父親とは全くキャラの異なる「叔父」の役をやったことがある。残念ながら、彼ら(兄弟)はたぶん全く影響を受けていなかったなぁと思う。その子たちは、今や立派な、社会的になんの問題もない大人に育った。その方が良かったんだろうけど。

でも、考え方としては私は正しいと思っている。経験よりも理論の信ぴょう性を私は尊重したい、この場合。

 で、 この「夢と犯罪」は、そんな話なのだ。

 さえない父親と非常に成功している叔父。当たり前だけれど、息子たちは(兄弟、兄:ユアン・マクレガー、弟:コリン・ファレル)は、特に兄はこの叔父に憧れる。

 ところが、自分たちの窮地を救ってもらう代わりになんと「殺人」を以来される。このへんのところの描き方はウッディ・アレンらしく「コミカル」に行くこともできたんだと思うが、話はシリアスに進んでいく。

 この映画の叔父さんが「寅さん」と違い成功者だ。むしろ、お父さんがみすぼらしく描かれている。

 しかし、しかし、この映画で一番いい、そしてある意味、一番かっこいいキャラクターは間違いなく「お父さん」だ。一番好きなセリフをあげておこう。

Mother: Everybody predicted great things for Ian. He’s so nice looking and personable. Now, it’s a mystery to me why he’s not more successful.
Father: Because he’s not content with what he has. He sees himself like Howard, with a fancy life. Always got some scheme. Always waiting for his ship to come in.
Mother: Well, his ship won’t come in at the restaurant. He does that out of a son’s love for his father.
Father: Like the poet said, “The only ship certain to come in has black sails.”

母」「みんなイアンはすごくなるって言ってた。ハンサムだし,
愛想はいいし。なぜ未だに成功していないのか私にはサッパリわからないわ。」
父「それは、自分に満足していないからさ。奴は自分をハワード伯父さんと同じだと思っている、派手は人生が送れると。常に計画があって、チャンスが巡ってくるのを待っているのさ。」
母「でも、レストランにいたらチャンスは来ないわね。父親に対する愛情でやっているのに。」
父:「こう言った詩人がいる、『確実にやって来るよなチャンスは必ず不幸もついてくる』ってな。」

(注:最後の詩人の引用は意訳したので詩っぽくないですけど、実際は「確実にやってくる船は黒い帆をあげている」でかっこいいです、ちゃんと。)

 それから、ボート。この映画はボートを買うシーンから始まる。

 ボートは彼らにとって「成功」の象徴で、どんなに中古で小さいボートでも、ボートを所有するっていうだけで成功の階段を一歩登ったような気分になれたのだと思う。

 そして、映画の最後もボートのシーンだ。ボートの中ですべてが終わってしまう。

 冒頭に引用したように、父の言っていた「頭痛のタネ」は間接的に正しかった、ということになる。このあたりはなかなかいいよね。


 最後に。

タイトルについて。原題は”Cassandra’s Dream” 。カサンドラはギリシア神話から来ていて日本人に馴染みがないから仕方がないかなとは思うけど、それにしても「夢と犯罪」とは!
 って、ケチをつけようかと思ったんだけど、「夢と犯罪」はほんとひどいタイトルだけど、これが「ウッディ・アレンの夢と犯罪」とウッディ・アレンをつけるとと、とたんになんか急に捻った良いタイトルのような気がしてくるから不思議だ。
 そういう意味でも、ウッディ・アレンはすごい。昔、「おいしい生活」ってCMあったけど、あれもウッディ・アレンが映ったからよりインパクトがでたんだよなぁ、って思い出したりした。


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