プチ・シニアの明るいひきこもり生活

刑事コロンボ「パイルD-3の壁」

      2015/08/30

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 第9作目。

 これは私にとってすごく印象に残っている作品。それは、トリックとか犯人像とか、そういうところではなく、ずばりカントリー・ミュージックというものへの印象だ。私は、どうもカントリー・ミュージックがずっと苦手で、大好きなビートルズやローリング・ストーンズでさえカントリー・フレイバーの曲はどうも敬遠してしまう。そんな私のカントリーが苦手なことのルーツはここにあるんじゃないかと思っている(あ、好きな人ごめんなさい)。

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登場人物について


 今回の犯人マーカムは建築家。大学でも教えているし、被害者の現妻とテニスをするシーンで、「あなたにも苦手なことってあるの?(”Isn’t there anything you do badly?”)」って聞かれくらい何でもこなしてしまう有能な人物だ。ちなみに、この質問に対する答えは「ああ、負けることさ。(”Yes. Lose”)」

 そんな、有能でかつ自信に満ちている人物だからこそ、自分の思惑通りコロンボを操れたと思い込み、最後のトリックに見事に引っかかってしまうわけだ。

 マーカムの口癖は「天才に値札はつけられない(” You can’t put a price tab on genius.”) 」なのだが、被害者は対照的人物。

 被害者はボー・ウイリアムソンというお金持ち。奥さんが若くて綺麗というのは置いておくとして(彼女は自分でも言っているけど頭はあまりよろしくない感じ)、自分の名前のついた街の計画にはなんの興味も示さず、「俺にとっては名前なんかより財布のほうがずっと大切なんだ(”My wallet is a lot more important than my name”」と言い切るような人物だ。

 テンガロンハットをかぶってカントリーを聞いているっていう、典型的南部出身。 マーカムは彼のことを「気まぐれなテキサス人 “volatile Texan” 」と称している。詳しくは描写されていないけど、田舎から出てきた成金っぽい感じがする。被害者だけれど、人物としてはあまりよろしくない。

 もう1人。ゴーディという前妻。なかなか気さくな人物で、会ったばかりのコロンボに、「こうやって実質的には裸みたいな格好でで一緒にいるんだから、もうあなたは友達よ(“Since I’m standing here practically naked with you, you’d better be my friends”)」と言って、ミセスではなく名前のゴールディで呼ぶように求めている。

 証拠をでっち上げようと余計なこともするけど、気落ちしたコロンボを慰めたりと、なかなかいい脇役ぶりだと思う。しかし、服装が派手だね。22年結婚してたってことは40は過ぎているんだろうけど。

トリックについて


 「一度探したところは探さないから死体の隠し場所としては最高」というのは、推理小説ではよく使われるトリックでことさら驚くほどのことではない。このコロンボのドラマの優れている点は、そのトリックへ持って行くまでの過程が練られている点だと思う。

 まず、コロンボが仕掛ける。大学の講義の後の場面だ。ピラミッドの話に関連させて、建物の土台の下に死体を埋めるのは死体を隠すいい方法だと仄めかす。

 次に、マーカムの方が、パイルD−3を掘り出してみればいいとコロンボをけしかける。

 そして、実際に掘り起こしてみて、何も出てこないことにがっかりするコロンボ。それを見て、マーカムは自分の作戦が成功したと思うわけだ。実際は、コロンボが相手の策略に乗せられたふりをした(”play along”)だけだとわかる。

 こういうシークエンスの旨さがトリックを引き立てていると思う。

 ところで、このパイルを掘り返すのにいくら掛かったのか、具体的に示されていないけど、相当かかったことは間違いないだろう。1人の殺人犯を挙げるのにここまでお金をかけるなんて…。最近のロサンゼルスを舞台にしたドラマを見ていると、警察も「財政難」で苦しんでいる様子がさかんに描かれているので、今では到底無理そうだし、例えフィクションであってもリアリティは感じられないんじゃないだろうか。


その他


★お役所仕事


 パイルを掘り返すためにコロンボが役所に行って、文字通り「お役所仕事”bureaucracy”」に呆れるシーンがある。コロンボはうなだれるだけだけど、ここは怒ってもいいんじゃないかな。私はこのエピソードが大好きで、見る度に笑ってしまう。警察だからってズルしていないところもいいね。

 当時は日本も同じように「役所」のイメージはあまり良くなかったけど、最近は随分改善されてきた。当のアメリカはどうなんだろう?きっとあまり変わってないだろう、というのが私の推理だけれど・・・。

★カントリー&ウェスタン・ミュージック

 上で「カントリー・ミュージック」書いたけれど、正確には「カントリー&ウエスタン・ミュージック」。吹き替えでは「ウェスタン」となっていた。
 結局、マーカムが犯人だとコロンボが確信したのは、「ウエスタン」が好きな人間がラジオで「クラシック」聞くはずがないという一点だった。それくらいこの2つは両極端で、聞く人のキャラは違うんだろう。まさに「水と油」。

 最後の最後にコロンボがそのことを告げるシーンのセリフは、

“Carnegie Hall and Nashville, they don’t mix.”
「ウエスタンとクラッシックじゃ水と油だ」

 元の英語ではちょっと洒落て、「カーネギー・ホール」と「ナッシュビル」という言い方をしている。

 ちなみにそれに対するマーカムの答えは、

“No, they don’t.” 「そうだな。」

 と単純なんだけど、吹き替えは、「建築家と殺人もだ。」と脚色している。

★タイトル


 原題は” Blueprint for Murder”(「殺人の設計図」)と、ありふれたタイトル。「パイルD-3の壁」の方がずっとインパクトがある。かなり思い切ったタイトルだけど、この邦題は大成功だと思う。

 放題で「壁」っていう言葉を使ったために、吹き替えでは前作「死の方程式」と同じようにコロンボのセリフの中に無理やり「壁」っていう言葉を使っている。(ここについては、「英語の勉強」の方で原文を引用して説明する予定)

★日本人ミコ


 当時の映画、ドラマに出てくる日本人役はたいてい日本人じゃなかった。このミコもひどい日本語を話している。日本人からするとちょっと納得出来ないけど、欧米人にはあれで十分「日本人」という設定は満たしているんだろうな・・・。

 こういうのを見るたびに、昔パリの下町で入った寿司屋を思い出す。
 店の名前も日本語で、ちゃんと板前っぽい格好をしている人もいるのに、店内にいる誰も日本語が出来なかった。日本人に見えたけど、たぶん中国人だったんじゃないかなぁ。おまけに英語も全く出来なかったので、注文にすごく苦労した。予想通り、味も大したことはなかった。




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 - いまさら刑事コロンボ

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