プチ・シニアの明るいひきこもり生活

刑事コロンボ「ホリスター将軍のコレクション」

      2015/08/25

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第5作。

 この作品はあまり好きではなかった。というのは、犯人のホリスター将軍が私は好きじゃないのだ。基本的に、きちんとし過ぎているからだ。制服を着ることに誇りを持っているような人間はあまり好きになれないのだ。

 ただ、それだけでこの話をダメって言っちゃ申し訳ない。今回は私の個人的な好き嫌いはちょっと横において見直してみた。

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 今回、コロンボの仕掛けるトリックはない。ホリスター将軍のトリックを偽装工作を見破るだけだ。最後のシーンでコロンボは「将軍の性格からしてありえない」という推理から正解を導き出した。

 コロンボというとスカッとするトリックで解決するっていうイメージがあるけれど、実際は、その前に入念に犯人を分析している。他愛のない家族の話も、帰ると見せかけてから浴びせる質問も、犯人分析のための情報収集だろう。

 これまでの5作を見てから考えてみると、コロンボの名探偵たらしめている最大の能力は、犯人の心理を分析する能力なのだと思う。犯人の性格や心理を読み、弱点を探し、トリックを仕掛け、偽装を見破る。こう考えてみると、第1作目「殺人処方箋」の犯人が「精神科医」だったのは極めて象徴的だと思う。

 と、ここまで真面目に考察したつもりだったのだが、考えてみたら、シャーロック・ホームズもアルキュール・ポワロも古畑任三郎(あまり見たことないのでたぶん)も、世の名探偵はもれなく心理分析に優れているっていう当たり前の事実でしかないな、って思った。ぶん殴って自白させるなんていう(もちろん違法だけど)名探偵の方が珍しい、というか、それは名探偵じゃない。

新機軸


 今回新しい試みがなされていると思った。殺人を目撃した母娘のことだ。彼らは共犯者でもなく、ただ頼りない目撃者でしかない。実際、この母娘に関することは事件の解決とはほとんど関係がない。だって、唯一の目撃証言が取り消されても解決できたんだから。

 それなのに、娘の結婚を中心に母娘のこれまでの人生が、小さなエピソードをいくつも重ねて描かれている。物語の最後では、つい私達は彼女に同情の念を覚えざるを得ないほど、彼女たちを知ってしまうのである。もしかしたらホリスター将軍よりもよく知ってしまっているかもしれない。
 事件を描きながら、別の物語も描くという点が新しく、ただの謎解き物語から一歩勧めた形になっているんじゃないだろうか。物語に膨らみを与えていると思うのだが。

吹き替えについて


 NHKのHDリマスター版で録画したものを見た後、DVDでセリフを確認するっていう形でコロンボを見ているのだが(だから、結構一つの記事に時間がかかってるんです!)、NHK版は英語音声、日本語字幕、DVDは日本語音声、英語字幕っていうスタイルで見ている。するとたまに面白いことに気づく。
 日本語吹き替えは、基本「小池朝雄バージョン」で昔のままだが、日本語字幕はDVDで出まわるようになって作られたのだろうからずっと後に作成したものだと思う。日本語字幕は、わりと元の英文に忠実なので、吹き替えとかなり違っている。暇があったら、日本語吹き替え、日本語字幕で見てみるといい、あまりに違ってびっくりするだろう。
あえて言うと、昔の吹き替えはすごく良く出来ている。ストーリー全体を考慮した非常にふさわしいものになっているし、コロンボのキャラクターを生かしたものになっている。時にかなり元の英語から離れていることもあるけど、むしろベターだと私は評価したいと思っている。この間も某名作の決めセリフで「これ訳した人絶対この映画を分かってないだろ」、っていうのがあったので、余計そう感じる。

さて、

Find a different spot
Or use a different bait.
「(吹き替え)他のつり場に行くか、餌を帰るか、餌を変えることだな。」


 釣りしているふりをしながら将軍を待ち伏せするシーンの最後、別れ際に将軍が高忠告する。これは、当然「疑う相手を変えるか、もっと違う証拠・手がかりを持ってこい」いうことを意味している。コロンボに対する挑戦的なセリフだ。

 そして、後半、クルーズに連れだされたコロンボが船酔して戻ってきたシーン。ヘレンがやって来て、きっぱりと目撃証言は間違えだったとコロンボに伝えた後、将軍が勝ち誇ったように言うセリフ、

(吹き替え)「忠告したろ、餌か釣り場を変えん限り何もかからん」

ところが、もとの英語はつぎのようになっている

“If you ever want to go out again, I’d be happy to take you, Columbo.”
「また海に出たくなったら、喜んでお連れするよ、コロンボ君」

と、船酔いしたコロンボを揶揄するセリフなのだ。

 これは、明らかに吹き替え版の方がすばらしい。わざわざ前半に出てきた言葉を引用して深みを与えている。脚本の原作者が知ったら、書き換えるんじゃないだろうかと思うくらいだ。さっきも書いたけれど、当時の翻訳スタッフはかなり力が入っていたに違いない、と私は思う。どうだろう。

 もうひとつ。

最後の最後のセリフ、

「(吹き替え)ウソを扱うのが刑事の仕事でしてね。」

 これは、英語にはない。でも、物語を締めるにとてもふさわしいセリフじゃないだろうか。

小ネタ


☆ いつもチリを食べるお店のシーンがある。

「チョッピリ辛いけどね、元気がモリモリ出ますぜ。」「これはメキシコ料理でね。」

 吹き替えではこんなふうに言っているが、英語は全くちがう(引用しないけど)。チリが登場するのは初めてではないけど、おそらく初回放映時にはチリも馴染みが薄かったから説明的なセリフに変えたのだと思う。

☆ 服装について

Custom-tailored … you know, I think it’s almost too nice, I mean, all that concerns about clothes, it’s kind of vain, don’t you think?
「オーダーメイドですよ、なんかきれい過ぎるでしょ、つまり、服装についてのこだわりがね、虚栄心が強いんですかね、そう思いません?」

 とコロンボが言う。上で、私が「制服に誇りを持っている人が苦手」って書いたけど、そのものずばりなんだな。

 すると、ヘレンからきつい一言。

Some men, lieutenant, do not want to look like an unmade bed.
「(吹き替え)だらしのない服装してるよりずっと好感がもてるわ。」

 英語では、”unmade bed” 「(寝た後の)乱れたベッド」とまで言われてしまった。

☆ 上でもちょっと書いた船酔いのシーン。将軍がこう言う

Columbo ,should he be more at home on a boat?

つまり、コロンブスの末裔なんだから、ボートの上のほうがよっぽどリラックスできなきゃおかしいだろ?って言ってるわけだ。




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