プチ・シニアの明るいひきこもり生活

刑事コロンボ「もう一つの鍵」

      2015/08/30

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 第7作目。

 はっきり言って、これまでの作品よりも魅力は少ないと思う。おそらく人気はない方の作品じゃないだろうか。

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犯人

 今回の犯人は、弁護士や作家といった「有能」な人物ではなく、逆に母親や兄からから失敗ばかりする「無能」扱いされている人物である。知性はあまり感じられないし、妙にヒステリック子供っぽい

 ただ、「ホリスター将軍のコレクション」の母娘の時と同じように、犯人のベスの人生が描かれている点がこの作品の肝なんだと思う。

 印象的なのは、裁判のシーンでさかんに爪を噛んでいること。心理学的に、大人になっても爪を噛む癖が治らないのは、「幼児性」、「自制心の欠如」を表しているらしい。

 そして、正当防衛として無罪になった後、彼彼女は急激に変わっていく。これまでの「押さえつけられた自分」を解放するかのように。

 彼女はこんなセリフをいう。

I’m perfectly capable of making my own decisions.「私だってちゃんと自分で決断できるのよ」

 最終的に彼女は、相談せずに婚約を発表してしまい、婚約者に、「君はなんだか兄さんに似てきたぞ」と言われてしまう(これは、吹き替えのセリフで、実際は「以前のベスじゃないみたいだ。」でも、これは吹き替えのほうがいい)。つまり、これまで兄に強いられてきた「自分で決めさせてもらえない」苦痛を、婚約者に対して与えてしまうのだ。

 「好意的」に描かれているシーンはほとんどないので、彼女はとんでもなく「嫌な女」に見えてしまう。特に、計画したとおり殺人が行われることを夢想するシーンで、いかにも嬉しそうな表情を見せるのはかなり印象が悪い。

 けれど、兄と母によって押さえつけられ、これまでほとんど「自由」のない生活をおくってきたことには少し同情してしまう。あとで記すけれど、コロンボの最後のセリフもそんな同情心から出たのではないかと思う。

トリック

 今回は、決め手となるいつものトリックが明らかに弱い。前作「二枚のドガの絵」に比べて圧倒的にインパクトが少ない。この作品が人気がないとしたら、それが最大の理由だと思う。

 少し面白いのは、コロンボが自らが「ウチのカミさんが謎を解いてくれたんです。」とはっきり宣言している所。その、カミさんのセリフというのが、

You’re putting the cart before the horse. 

 これは普通「本末転倒なことをする」くらいの意味だけど、ここでは、「馬の前に荷車をつなぐ」つまり「時間の前後が逆」っていうこと。これが事件解決の糸口となる。

 ・・・・、うーん、やっぱり、弱いなぁ。

エンディング

 私はこのエンディングは割と好きだ。トリックが弱いだけで、無視しちゃうのはもったいない作品かなと思う。

 これが、コロンボの最後のセリフ。

“Ma’am, would you get dressed now? Take all the time you need.”
「着替えていらっしゃい。いつもみたいに美しく」

 最後の文は直訳すれば「(急がなくてもいい)好きなだけ時間をかけていいから」。

「好きなだけ時間をかけていい。」というのは、自分で決められない人生をおくってきた彼女への同情の気持ちが滲んだ言葉だと思う。

 同時に、コロンボのこのセリフは、「子供」に対する愛情のようにも聞こえる。兄や母のせいで、大人になれなかった「子供の彼女」への。

そう思わざるを得ないのは、このセリフを聞いた彼女の表情が、明らかに子供の表情だからだ。子供が親から「許可」を得た時に浮かべる喜びの表情、まさにそれだと思う。

 この後に、コロンボは無言で外に出て葉巻を吸うシーンが長めに撮られている。コロンボのやるせなさを表しているのだと思う。

その他

☆タイトルについて

 原題は”Woman in Waiting”。今回の「もう一つの鍵」はいただけない。鍵は今回のドラマではそれほど重要ではない。原題は、「待つ女」あるいは「待っていた女」の意味で、明らかに原題の方がよい。
ベッドで兄を撃つのを待っている女、そして、自分が解放されることを待っている女、そんなダブル・ミーニングを表していると思う。
 ずばり、私は「待つ女」が良かったと思う。コロンボシリーズのわりと硬いタイトルからは浮いてしまうかもしれないけれど。

☆ベスの婚約者

 ベスの婚約者ピーター、「あの裸の銃を持つ男」のレスリー・ニールセンが演じている。コメディ専門のようなイメージがあるけど、昔はシリアスな役をやっていたんだなぁ。ピーターは、”fortune hunter”(「財産目当ての男」)って言われていたけど、ドラマが進むにつれ、結構いいやつだとわかる。最後、一番大事な証言をするって言うしね。なかなかいい役。

☆電車賃?

 ベスの母のタクシー代を立て替えたコロンボ。帰り際に返してもらおうとすると、彼女は「カード(名詞)を置いていって、後で送りますから」と言って返してもらえない。するとコロンボは小声でこう言う。

“I’m all out of cards.“ 「カードを切らしちゃっているんですよ。」

ところが、吹き替えは、「帰りの電車賃が・・」

 えっ!コロンボが電車? コロンボはあの車でしょ。しかも、ロサンゼルスだから、刑事が電車で移動というのはキツイんじゃないかな・・。

 あえてギャグで電車にしたんだろうか・・・?。


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