プチ・シニアの明るいひきこもり生活

実は夏のうだるような熱さが主人公、「狼たちの午後」

      2016/01/31

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SAL: I’m never going back to prison… We got our own deal already… Do you remember the pact we made? You and me and Jackie – that night in the bar… we were talkin’ about if we get trapped in the bank, what are you gonna do… Right? What did we say? What did we say!

SONNY: We’d kill ourselves.

サル「もう刑務所にはもどらない。もう決めてあったはずだ、そういう取り決めだったろう、俺とお前とジャッキーで、あの晩あのバーで、もししくじったらどうするってさぁ、そうだろ? どうするってきめたんだっけ?なぁ、どうするって言ったんだっけ俺達は」
ソニー「捕まるくらいなら、俺達同士で殺し合おう・・・だ。」

 大好きな映画。何度も見てるけど、NHKでやっていたからまたつい見てしまった。まだ死ぬまでに何度も見るだろう。

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 とにかく邦題がかっこいい。ベスト邦題賞というのがあれば必ず10位以内に入るだろう。

 原題は、”Dog Day Afternoon” 。”Dog Day”というのは、正確には “dog days of summer” で、「暑すぎて犬もおかしくなっちゃう」から「(夏の)暑い盛り」という意味らしい(一説)。

 で、これを「犬」じゃなくて「狼」に替えてしまったところがポイント。これで、「社会からはみ出て反抗する」というテーマがうまく伝えられていると思う。

 監督は「怒れる十二人の男」のシドニー・ルメット。主演はアル・パチーノ(ソニー役)。ルメットは、アル・パチーノ主演で「セルピコ」も撮っている。確かに「社会派」って呼ばれるのもわかる。

 アル・パチーノは、相変わらず(?)よい。油が載っている時期だ。ギラギラした感じと弱さと頭の良さを併せ持つ人間像をうまく演じていると思う。

 相棒役は、ジョン・カザール(サル役)。私は彼は好きだなぁ、「弱さ」を表現できるところが好きだな。ゴッドファーザーでもすごくよかった。ちょっと気になるのは「狼たちの午後」のサルとゴッドファーザーのフレドーがほぼ同じに見えてしまうところだけれど、まぁそういうキャラの俳優なんだろう。

 実はすごく良く出来た脚本だなぁ、と私は思っている。フランク・ピアーソンという人の脚本。

 さて、例によって、この映画も「社会からはみ出してしまう」、「社会に阻害されている」人物の物語である。「例によって」と書いたのは、この頃の映画はそういうテーマがすごく多いからだ。(真夜中のカーボーイの記事)

この映画では、主人公のもつ疎外感を

1 人の話を聞こうとしない妻や母親

2 興味を持つような振りをするくせに放送禁止用語(つまり社会的にNG)を使っただけで一方的にインタビューを終わらせてしまうメディア

 という形で表現している。特に妻と母親は、一方的にしゃべりまくり全くソニーに口を挟ませない。こちらは歩み寄りたいのに、ソニーの思惑には耳をかそうとしない妻と母。妻と母は、そのまま「社会」に置き換えられる。

 唯一、話の出来る相手はゲイのレオンだけだ。言うまでもなく、ゲイはマイノリティだった(特に当時は)。同じように社会から拒絶された者同士の二人なのだ。

(この映画は事実を元にしているけど、この銀行強盗の動機はこのゲイの愛人の性転換手術代を手に入れるためだったらしい。)

 そして、ラストシーン。

 結局ソニーは、サルを裏切る形で自分の命だけは助かる。冒頭に引用したセリフを思い出す。彼はサルを裏切り、そして自分も裏切る形で社会に留まることを選んだ。

 車に両手をつきながら去ってゆく人質たちの姿を眺めソニーの目はそんな彼の複雑な心境を表現している。アル・パチーノはこういう表情はすごく上手い。

 最後に、愛すべき相棒サルに関係する会話を幾つか引用する。彼が「愛すべきキャラクターの持ち主」であることがわかればわかるほど、ラストシーンの皮肉で悲しい印象は強くなるはずだから。

SONNY : If we gotta be outside the country, where do you wanna go? Any country. Just name a country.
SAL : Wyoming.

ソニー「国外に行くとなれば、お前はどこがいい?どこの国がいい?」
サル「ワイオミング」

SYLVIA : You never smoked?
SAL : I used to, but I stopped.
SYLVIA : You stopped? Why?
SAL : Because I don’t want cancer.
SYLVIA : You don’t want cancer? You’re about to get your head blown off, you’re worried about cancer.

シルビア「タバコ吸わないの?」
サル「辞めたんだ」
シルビア「辞めた?なぜ?」
サル「癌になりたくない」
シルビア「癌になりたくない?今にも頭をふっとばされそうな状況で、あんた、癌の心配してるの?」

MARIA : Sal? Because I know it’s your first plane trip. Don’t be scared, you know?
マリア「サル? 飛行機に乗るの初めてでしょ? 怖がらないで」
(と言ってロザリオを手渡す)


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