プチ・シニアの明るいひきこもり生活

今年見た中のNo.1 「ピアニスト ( La Pianiste) 」

      2016/01/31

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 ハネケ監督の映画。「愛、アムール」(鑑賞記事)があまりにもいい映画だったので、今回もすごく期待して見た。

 結果、期待を裏切るどころか、大傑作。「ショッキング」という言葉は、ハネケ監督の映画を形容するにはあまりふさわしくないのかもしれないけれど、私はショックを受けた。

 映画自体は2001年のものだけど、今年見た映画の中では、No.1

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 「ショッキング」という言葉を使うのをためらうのは、映画自体は、倒錯した性的嗜好をもつ、有能なピアノ教師の、歪んだ愛の物語というスキャンダラスな内容にもかからわわず、ストーリーは比較的淡々と進んでいくからだ。ただし、小さなエピソードを重ねる前半、その淡々とした映像の中で見ている私達の中には、彼女の情念が生み出す不安が徐々に膨らんでいく。まるで、「ボレロ」やプログレ・バンドの曲のように、長い時間をかけてラストのカタルシスへの準備を整えていくかのような映像の運び方なのだ。

 主演を演じたイザベル・ユペールが素晴らしい。私は別に熟女趣味はないけれど、ジーナ・ローランズといい、このイザベル・ユペールといい、最近いいなと思う女優は年がそこそこいっている人が多い。単に私が年をとったということか、あるいは、単に彼女たちが上手いということか・・・。

 映画を通して、彼女の目はすさまじい表現力を発揮する。「目が語る」っていう使い古された常套句があるけれど、彼女の場合はそんなレベルじゃない、情念や狂気を直接私達の心に放り込んでくる。

 ラストシーン、まさに、「ショッキング」なラストシーン。「鬼気迫る」という、やはり、常套句が霞んでしまうほど、彼女演技はすごい。私は、見終わった後に、もう一度巻き戻して見なおしてみた、彼女の表情は本当に怖かった。比喩ではなく鳥肌が立った。

 「ショッキング」といえば、教え子の発表の時にこっそり割れたガラスをポケットに入れておくシーン。小さな嫉妬(と私達には思える)から、あまりにも大胆に淡々と残酷な復讐に及ぶ彼女も怖かった。このシーンは、彼女の狂気がほとばしり出る、その開始のベルのような枠割もしている。

 「愛、アムール」で気づいたのだけれど、この監督は「」のシーンをとても印象的に使う。今回もそうだ。大切なシーンでは必ず「扉」の映像がどこかに顔をだす。

 彼女の狂気の原因のひとつと思われる母親との葛藤も、扉を使って印象的に描かれていると思う。「扉」を開けて覗きこもうとする母親、ウオルター(主人公の相手)に「扉」を閉めて閉じ込められて叫ぶ母親。
そして、ラストシーン、彼女が歩き去った後にも「扉」だけがカメラの前に残される。

 まだ2作しか見ていないけれど、この監督はすばらしい。ほんとに。
 これまでこの監督のことを知らなかった自分が恥ずかしい。でも、ある意味、まだ見ていない作品がいっぱい残っているのは幸せなことかな・・・。

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