プチ・シニアの明るいひきこもり生活

旅はいつも冒険

      2015/08/25

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 A Rapid Penang city bus

 以前の記事で書いた、定年を前にしてバックパック旅行に魅入られたしまった人の話をもうひとつ。

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 その旅の数カ月後、私がちょっと仕事も絡んでマレーシアのクアラルンプールに出かけることになった時、「昼間はちょっと付き合えないけど、夜は一緒に飲めますよ。昼間は1人で自由行動ですけど、良ければ一緒に行きますか?」って誘った。彼は、二つ返事で同行した。

 ある日、「バスでマラッカまで行って夕日でも見てきたらどうですか?」って提案した。「プドゥラヤ・バスターミナルからいっぱい出てるから。」

 その日の夜、彼はなかなか帰ってこなかった。私も呑気に「気に入って泊まることにしたのかしらん」って、特に心配もしなかった。

 10時過ぎくらいに部屋のドアがノックされた。彼だった。開口一番、

「まいっちゃったよ」

 でも、彼の顔は笑っていた。

 近くのバーで飲みながら詳しい話を聞いた。

 帰りのバスが行きに乗ったプドゥラヤ・バスターミナルに着くものと思い込んでいたら、どうもそうじゃなかったらしく、まだかまだかと待っているうちにどんどんクアラルンプール市街から離れていって、結局終点で降りることになってしまった。そこはかなり寂れた場所でかなり遠くまで行ってしまったらしい。

 近くのお店で、ここがどこで、どうしたらクアラルンプール市内に行けるかを尋ねたらしいが、英語が話せる人がいなくてかなり困ったらしい。幸い、何軒目かにいた若者が英語が話せ、しかも親切に帰り方を教えてくれたらしい。

「それで、今ホテルに辿り着いたんだよ」
「ドア開けた時、嬉しそうだったから、遊びすぎて遅くなったのかと思いましたよ」
「いや、やっとついてホッとしたんだよ」

でも、「ホッとした」だけの笑顔じゃなかったんじゃないな、って今では思う。

 というのは、つらい経験だったけれど、とにかくインパクトが強かったらしいのだ。その後は、明らかに「刺激」がないことに不満をもらすほどになってしまったのだ。別の旅でのことだが、以前の旅で知り合った現地の人に、住所だけを便りに写真を届けるという「冒険」を自ら設定してたのだ。彼はウキウキしていた。ふつう観光は行かないような小さな村だった。

 戻ってきた彼に、「見つかりました?」って尋ねたら、彼は顔をしかめた。ダメだったのかな、と思っている私に、彼はこう言った。

「いや、見つかったんだけどさ・・・・、あんまり簡単に見つかっちゃって、あんまりおもしろくなかったんだよ

 私はちょっと呆れて、「あんまり無茶しないでくださいよ」って言うしかなかった。

 旅は、冒険でもあり、麻薬でもある。


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 - 消えそうな旅の断片 ,

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