プチ・シニアの明るいひきこもり生活

低予算だけど、あるいは、低予算だからいい、「ONCE ダブリンの街角で」

      2016/01/31

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ONCE ダブリンの街角で [DVD]

 例によって何も知らずに見た。タイトルに「ダブリン」とあるのと、ストリート・ミュージシャンの話だというのと、2点が気になったので見ることにした。

 無知なので歴史的なことはともかく、アイルランドってちょっと気になって行ってみたいと思っていた。たぶん、行けないだろうけど、町並みは見てみたかった。ちょっと暗い雰囲気のところが好きなんだな、昔から。旧共産圏の街とか。

 それと、私はちゃんとストリート・ミュージシャンをやったことはないのだけれど、何度か友達を手伝ったことがある。あれは、なかなか大変で、自分にはできないな、と思う。

 そんな訳で、なんとなく見始めた。

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 いい映画だと思う。音楽もいい。後で調べてわかったけれど、すごく低予算で作っているらしい。逆にそれがいい雰囲気を醸し出していると思う。佳品だと思う。

 主人公の男が街角でギターを弾き語りしているシーンから始まる。このギターが凄い。ストロークのせいでピックガードがなくなり、そのあたりにデカい穴が空いている。ちなみに、タカミネのギターだ(普通の人はそんなことはどうでもいいんだろうけど、一応私もミュージシャンのはしくれなので気になる)。いい音がしている。

 ほとんどの街人は通り過ぎていく。それがいい。私は、人垣ができて聞いているっていう光景はあまりすきじゃない。シーンとしては、ほとんど誰も耳を傾けない中歌っているという方がなんとなくいい。

 と、あえて書かなくても、映画は、もちろん、そんな演出をする。誰もが通り過ぎる中、一人の女性が彼の歌の良さに気づく。

 そうやって映画は始まる。

 私の一番好きなシーンは、女性が掃除機を引きずりながら街を歩いて行くシーンだ。このシーンを見て、この映画はいいんじゃないかなって思った。

 二人が心をかよわせるスタートとなるシーンは、もちろん、歌だ。音楽だ。

 これも後で知ったのだけれど、この歌 “Falling Slowly” はアカデミー歌曲賞を取っているらしい。むしろ、そんな仰々しい飾りをつけないほうがいい佳曲だと思うけれど。この歌はエンディングにも流れる。

 ストーリーに関していえば、長く付き合った彼女との別れに深く傷つき、未だに立ち直れないでいる男と、チェコからやはり夫を残して、母と娘と共に移民してきた女の、恋愛と呼べるかどうか微妙な関係を中心に描かれているのだけれど、正直、私はそういうバックグラウンドを絡めたストーリー運びにはちょっと深みが足らないんじゃないかなって思った。

 どちらかと言うと、ストーリーを描く映画というよりは、音楽を伝えたい映画という風に私には感じられたのだ。ラストに向けて、レコーディングのシーンがわりと長く続くのもそんな印象をあたえる一つの要因だと思う。

この映画の中で私が一番好きな曲は、最初にレコーディングされる、”When Your mind’s made up” だ。タイトルもいい。

 素朴な人たちが描かれていてホッとするし、音楽は温かいし、ダブリンの町並みも美しい。ちょっと気になったら、見て損はしないと思う。

 最後に、”Sinking Slowly” の歌詞を一部紹介して終わりたい。

Take this sinking boat and point it home
We’ve still got time
Raise your hopeful voice you have a choice
You’ll make it now
「この沈んでゆく船で家をめざそう
 僕らにはまだ時間がある
 道は選べるんだから、希望の声をあげよう
 きっとうまくゆくはずさ」


 

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 - なつかしの音楽鑑賞, 遅れてきた映画鑑賞 ,

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