プチ・シニアの明るいひきこもり生活

わがままが許されるほど、ギターがうまくなりたい「ギター弾きの恋」

      2016/01/31

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He could only feel pain for his music. Such is the ego of genius.
「彼が痛みを感じるのは自分の音楽に対してだけ。天才のエゴってそういうもの。」


 ウッディ・アレンの映画である。ウッディ・アレンといえば、個人的には「カイロの紫のバラ」「ブロードウェイのダニー・ローズ」「ラジオ・デイズ」あたりが一番脂が乗っていたっていう気がする。その頃は、ウッディ・アレン大好きを公言していた。だけど、その後の映画は今ひとつな感じがして、だんだん熱心に見なくなってしまった。そこそこ面白いんだけどね。

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 ウッディ・アレンって多作だから、ほぼ毎年映画を撮っているような気がする。どの映画を見てもそれなりに楽しめるのが彼の凄さかもしれない。

 さて、「ギター弾きの恋」である。自分も底辺とはいえギター弾きの一人なので興味はもちろんある。正直言って、ジャズ系の音楽はほとんど聞かないので(ジャンゴ・ラインハルトの名前くらいは知っているけど)、分野違いなのだが、それでもギター弾きの映画なのだから共感できるところもある。私だって、天才と言われるくらい上手ければ、傲慢でわがままな嫌なやつになりたいと思う(笑)。

 これは、天才ギタリスト、エメット・レイの物語である。ドキュメンタリー風な撮り方をしているけれど、これはフィクションである。ギタリストとしては天才的で聞く人を涙させるほどの実力を持つのに、浪費家で、女たらしで、盗癖があり、ポン引きまでしている男である。この男をショーン・ペンが演じている。この役で彼はアカデミー賞主演賞を取ったらしい。演技はまぁいつものように上手い。
 ギターを弾くシーンも、普通はあえて手元を映さなかったりするのに、この映画ではたっぷりと映している。ギタリストの指導を受けたらしいけど、かなり本当に弾いているっぽくみえる。
 でも、一応私もギタリストのはしくれなので騙されない(笑)、シングル・ノートはかなり繕ってるけど、コードはほとんど押さえていない。まぁ、そんなことは演技の質とは関係ないけど。

 彼女の恋人ハッティは、サマンサ・モートンという女優が演じている。名前は知らなかったけれど、彼女は知っている。「マイノリティ・リポート」にも出ていたし、私の好きな「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」にも出ていて印象に残っていた。すごくきれいな女優ではないけど、私は好きだな。ユマ・サーマンも出ているけど、ここはサマンサ・モートンの勝ちかな。

 彼女が演じる、このハッティという女性は口がきけないという設定になっている。これは、エメットのキャラを浮き立たせるのに非常に効果的だと思う。というのは、彼女とコミュニケーションをとるには、エメットはより多くを言葉を発しなければならないからだ。エメットが言葉を発すれば発するほど、彼の「わがままさ」が浮き彫りになるというわけだ。それに、そもそもわがままな人間は、自分が話したくて人の話は聞こうとしない事が多いから、最初から話せない相手を設定したのかもしれない。

 そして、この役をサマンサ・モートンは素晴らしく演技している。ショーン・ペン演じるエメットが最後に言う、「俺は間違っていた(”I made a mistake”)」という叫びがリアリティを持つのも彼女の演技のおかげだと思う。

 映画では、ギターの才能を除けば、とんでもなく性格が悪そうに描かれているが、唯一、自分より優れていると認めるジャンゴ・ラインハルトに関してだけは弱みを見せる。彼のステージを見て失神したというエピソードと、客席に彼が来ていると言われて恐れをなして逃げるエピソードだ。エメットは自信に溢れているが、それはあくまで自分より下と思った人間に対してだけであって、そういうのは本当の自信とは言えないだろう。

 私達観客は、彼のひどい言動に顔をしかめたり、時には馬鹿げた行動を笑い飛ばしたりしながらも、映画が進むうちに、彼が内に隠している痛みにも薄々気づきはじめる。

 ラストシーンでは、連れだした女性に彼のギターを聞かせるけれど、彼女は寒いことに気を取られ、彼の音楽に全く感動せず「もう、終わった?」と言ってしまう。

 これを聞いて、エメットは傷つく。そして、思い出す、ハッティだけが自分の音楽に本当に感動し、そして、自分を無条件に受け入れてくれた存在だった、と・・・。

 インタビューでウディ・アレンは、原題の”Sweet and Lowdown” は、もちろんガーシュインの曲のタイトルから取ったもので、”Sweet” がハッティで、”Lowdown”がエメットだとはっきり言っている(”Lowdown” は「卑劣な」という意味)。





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