プチ・シニアの明るいひきこもり生活

「第三のビール」を飲みながら「第三の男」を見る

      2016/01/31

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 久しぶりに見た。ラストシーンの印象が強くて、その前の部分は結構記憶から抜けていた。

 大戦後のウィーンの町並みもいいし、下水道の追跡シーンもいい。影を大胆に使った演出もいいし、脚本もいい。チターによる主題歌も抜群にいい。淀川長治は「映画の教科書」と言っていた。

 ヒロインのアンナがとてもいい。ほとんど笑顔のシーンはない。そこがいい。

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 ホリーの旧友ハリーに対する感情は、現在の彼のことを知るにつれ変化するのに、彼女のハリーに対する気持ちは変わらない。
 私も長く生きているけれど、一向に女心はわからない。でも、このアンナの気持ちは少し分かる気がする。

He never grew up. That world grew up around him, that’s all, and buried him.
「彼は子供のままだったわ。周りはみんな大人になって、彼を葬ったんだわ。」

I don’t want him anymore. I don’t want to see him, hear him. But he’s still a part of me, that’s a fact. I couldn’t do a thing to harm him.
「もう彼とは会いたくも、彼の話も聞きたくもないわ。でも、事実、彼は今でも私の一部なの。だから彼を傷つけることなんかできないわ。」

 そう言って、ハリーを売ってアンナを助けようとするホリーの好意を拒絶する。
 ホリーはアンナに恋心を抱いているけれど、アンナは映画の中で常に彼よりうわてだ。

Oh, you’ve got your precious honesty and don’t want anything else.
「正直でありさえすればいいと思っているのね。」

Honest, sensible, sober, harmless Holly Martins. Holly, what a silly name!
「正直、賢明、純真なホリー・マーチンス。ホリー、なんて、馬鹿な名前なの」

 なかなか、きつい。
 後者のセリフは、ラストシーンで車を降りる時のキャロウェイとの会話に繋がっている。

CALLOWAY: Be sensible, Martins. 「馬鹿なことを・・・」
MARTINS: I haven’t got a sensible name, Calloway. 「馬鹿な名前を持っているんでね」

 このラストシーンは、いつ見ても素晴らしい。チラ、ホラ、と葉が落ちているのも素敵だ。遠くからまっすぐと歩いてきたアンナが待っているホリーには目もくれず通り過ぎて行く。

 ところで、通り過ぎた後、ホリーはタバコに火をつけるけれど、これは、落胆と照れ隠しと自己憐憫の感情をうまく表現していると思う。こういう時の「やれやれ」っていう気持ちを表すのには、タバコはすごく便利な道具だと思う、私が喫煙者だからそう思うのかもしれないけれど。これ、タバコが無かったら、いったい、どうやって表現するのだろう。

 あと、2つほど気に入ったセリフを引用したいと思う。

A person doesn’t change because you find out more.
「ある人のことをより深く知ったとしても、その人自身が変わるわけではない。」

 所詮、私達は誰かについて部分的にしか知らずに評価する、好きになったり嫌いになったりする。「あんな人だとは思わなかった」とか「あの人は変わってしまった」というよくある非難は、自分に都合のいい部分しか見ていなかったか、些細なことしか見ていなかったのかもしれない。その人自体は全く変わっていないのかもしれない。
 

Look down there. Would you feel any pity if one of those dots stopped moving forever?
「下を見てみろ。あの点のどれかが動くのをやめたからって、同情するのか?」

 これは、殺人を正当化しているセリフなので感心しちゃいけないのだけれど、高いところから街を俯瞰した時などに、人が点に見えて、人間てなんてちっぽけな存在なのか、って思ったりする。自分も含めて
そして、昔、村上春樹

「この宇宙の広大さに比べれば、僕たちの世界なんてミミズの脳みそのようなものさ」(「風の歌を聴け」)


 って書いていたのを思い出す。


最後に。
 急遽2日ほどウィーンに滞在したことがあるのだけれど、なぜかこの映画のことを思い出さずに、あの観覧車には乗りそこねてしまった。残念。




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 - 遅れてきた映画鑑賞 ,

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