プチ・シニアの明るいひきこもり生活

もう猫パンチのことは忘れようー ミッキー・ローク主演「レスラー」

      2016/01/31

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And, you know, the only place I get hurt is out there.
The world don’t give a shit about me.
「俺を痛みを感じるのは、リングの外、つまり世間さ。誰も俺のことなんか気にしちゃいない。」(心臓が痛むかと聞かれて答えたセリフ)


 私はプロレスというものが苦手で、これまで一度もちゃんと見たことがない(そういえば、昔ゲームはしたことがあったかな。)
さらに、ミッキー・ロークという俳優に全くいいイメージは持っていなかった。若い人は知らないだろうけど、昔はちょっと(今風に言えば)痛いキャラだったと思う。「猫パンチ」って言葉も彼を揶揄する言葉で有名だった。

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 そんな訳で、この映画を見ようと駆り立てる要素はまったくもってゼロだった。

 ただ、偶然この映画の番宣というか紹介映像(トレーラーというには短いものだったけど)を見て、興味をもった。「あの、ブリブリ言わせていたミッキー・ロークがこんな風になっちゃったの?」
 いやぁ、我ながら卑しい。以前成功していたのに、今では落ちぶれてしまった人間の姿を見てみたいという卑しい根性だ。

 しかし、卑しい行為は必ずやしっぺい返しを食らう。

 いや、いい映画だった。昔はともかく、このミッキー・ロークはなかなか魅力的だった。

 「監督が制作会社のニコラス・ケージを起用しろという要請を蹴ってまでミッキー・ロークに固執して撮った(wiki より)」という話は、当然といえば当然。だって、これは俳優ミッキー・ロークのための物語だから。ミッキー・ローク本人の人生のように一度落ちぶれた人間にしかリアリティをもって演じることができないの物語なのだから。プロレスという表面的な題材に騙されてはいけない。

 もうひとつ騙されちゃいけないのは、これは落ちぶれたレスラー(というより人間)の哀愁の物語なんかじゃない。私は見る前の印象ではそう思っていた。違う。これは「世間」との決別を高らかに宣言した、むしろ、勝利の物語なのだ。哀愁があるとすれば、この勝利が苦いものだからだ。

 冒頭の引用でわかるように、彼は世間に加わろうとして拒絶された人げなのだ。「拒絶」という言葉は、実は相応しくない。確かに娘には拒絶されているけれど、「すっぽかす」という直接的な原因がなくても、間違いなくいい関係は長続きしなかったろう。自業自得という言葉はちょっとちがうかな。結局、自分からえらんでいるんですよ、彼は。彼はそんな風にしか生きられないんだから。

 で、娘に拒絶されて彼は悟る、今では娘も世間の一員であることを。結局、自分は世間に合わせて生きていくことはできない。だから、スーパーの仕事も自分からキレてやめたのだ。だから、自分をやっと受け入れると言ってくれたストリッパーのキャシディも文字通り拒絶してしまう。

You know, if you live hard, and you play hard…
and you burn the candle at both ends, you pay the price for it.
You know, in this life you can lose everything that you love…
and everything that loves you.
「がむしゃらに生きて、がむしゃらに遊んで、身も心も燃やし尽くしえば、そのつけは払わなきゃならない。人生では、自分が愛するものすべてを失うこともあるんだ、そして自分を愛してくれるすべてのものも。」


 ラストシーンではリングの上で彼はマイクを持って観衆にこう語りかける。「自分を愛してくれるすべてのもの」も失わざるを得なくなってしまう人間もいるのだ。

 そして、文字通りこう宣言する。

I’m still standing here, and I’m the Ram.
俺はまだここに立っている。俺は今だって昔のラムのままさ。」


 この後、彼に対してもうダメだ、終わりだって言えるのは、ここにいる観衆だけだ、というセリフが続く。彼が言う観衆とは、いわゆる世間とは違う、彼の世界の人間ということだ。

 この映画が感動を与えるのは、彼とは違い、違和感を感じながらも世間と折り合っていく人生を送っている大多数の(たぶん)人たちに爽快感を与えるからだろう。

 そういう意味で、プロレスという題材はとてもふさわしいものだと思う。プロレスの与えるカタルシスがとてもこの映画のテーマに合致していると思うから。

おまけ。

 音楽のこと。

– Fuckin’ ’80s, man. Best shit ever. 
– Bet your ass, man.
– Guns N’ Roses fuckin’ rules.
– Cre.
– Yeah.
– Def Lep.
– Then that Cobain pussy had to come around and ruin it all.

 つまり、「80年台の音楽が最高。ガンズン最高。デフ・レパードとか。でも、軟弱なニルヴァーナが出てきて全部だいなしさ」っていうこと。

 ガンズンは確かにカッコよかったけれど、個人的にはちょっと同意できない。

 ただ、このくだり、わりと深いと私は思っている。ショーマンシップとかロックの本質とかの観点から考えると、ガンズンとニルバーナって両極端っぽいイメージがある。もちろんプロレスはガンズンに非常に近い。

 そして、このセリフを中和させるかのようにエンディングではブルース・スプリングスティーンの弾き語りで終わる。ブルース・スプリングスティーンってロックの本質を体現しながらも、ショーとしても完璧なものを提供できる稀有なアーティストだから。私は、にくいなぁと思った。






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