プチ・シニアの明るいひきこもり生活

オヤジひとり、ベトナム旅日記(1)

      2015/08/31

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 (注:この文章は初めてベトナムに行った2006年の旅の記録です。ベトナムは急速に発展しているので、当時とはかなり大きく違っています。特に、物価等は大幅に変わっていますので、そのあたり考慮の上お読み下さい。)

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 アジアが私たちを迎える洗礼が二つある。

 ひとつは熱気だ。空港の建物を出た瞬間に、あのもやっとした暑気が体を包む。今年の日本の梅雨は予想以上に長く、涼しさに慣れきった身体からいっせいに汗が噴き出す。

 もうひとつは取り囲む人の群れと次々に発する「タクシー?」の声だ。

 さあ、着いた、そう、思う瞬間だ。

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 私はその声を無視して数時間ぶりのタバコに火をつける。「タクシー?」の声はやまない。首を横に振りながら「バスだ、バスでいくんだ」と繰り返す。誰かが、「バスは明日の朝まで出ない」と言い、周りの者がうなずく。まだホーチミンは、夕方の5時だ。どう考えても、バスがないなんてありえない。私は笑いながら「バスだ」と繰り返す。あきらめた連中は、次の獲物を探しにさっと引き上げていく。

 「さて、バス乗り場をさがすか」、そう思っている私に、男が寄ってきて大きな白い紙を見せる。ホテル名と日本人の名前が書いてある。ホテルの出迎えのようだ。私は首を振る、「私じゃない」。男はため息をつく。ずいぶん待っているのだろうか、だいぶ疲れている。私の横から離れないので、聞いてみる。

「市内に行くバスは、どこからでるんだ?」
「あのバスだ」

 男が指差した先に、白いバスが見える。そう、遠くない。私はさっきバスはもう無いと言った男を探すが、もちろん顔なんか覚えていない。

「いくらだい」
「2000ドン」
「ありがとう」
「ホテルは決まっているのか」
「いや、まだだ」

「もし、いいホテルがなかったら、ここにとまってくれよ。10ドルから部屋がある。」
男はもう一度その白い紙を見せた。
「わかった。覚えとくよ。」
僕はもう一度「サンキュ」と言って、バスに向かった。

 バスには4,5人の客が乗っていた。よくアジアのバスがそうであるように、客が埋まるまで走り出さないとすればずいぶん待つことになる。しかもバスの中はさらに暑い。外に出てタバコを吸おうかと思った瞬間にエンジンがかかった。意外なことにエアコンもついているようだ、かすかな冷風が舞い降りてきた。車掌がお金を集めに来る。1万ドン渡すと、2000ドンを4枚帰してよこす。「ファン・グー・ラオ」と言ったが、車掌はあいまいな顔でうなずくだけだった。どうも伝わってない気がするが、近くになればわかるだろう、きっと。バンコクのカオサン通りに似た町並みになったら、降りればいいだけのことだ。

 市内に近づくに連れ、バイクの数が増えてゆく。タイよりも多いかもしれない。バスはクラクションを鳴らしながら、さらに進む。いや、タイよりも間違いなく多い。バスはバイクに取り囲まれて走る。護衛、いや、コバンザメのようだ。1台のバスの周りを何十台ものバスが取り囲む。

 町並みがだいぶにぎやかになってきた。前のほうに座っている車掌が、こちらを何度か振り返ってみる。教えてくれているのか?そろそろなのか?前に座った男に「ファン・グー・ラオ?」とたずねると、一瞬ぽかんとしてから、そうだ、と言うようにうなずいた。次のバス停で、かなりの人数が降りようとしているので、とっさに自分も荷物を抱えた。たぶん、ここだろう。

 降りては見たが、まったく自分がどこにいるのかわからない。とりあえず、タバコを吸いながら、通りを眺めてみる。あせることは無い。地図を出して確認するのも簡単だが、すぐに誰か寄って来るだろう。

 その通りだった。

「ホテル?」
「ああ」
「私のホテルはいいホテルだ。安い。10ドル」
「どこ?」
「あそこだ。連れて行く。」
一本入った通りの方を指さす。
「見て、気に入らなければ、やめるよ。それでも、いいか?」
「いい。いい。ホテルは他にもある。」
「OK。じゃ、タバコを吸い終わるまで待ってくれ。」

 私は忘れていた大事な質問をする。
「ここは、ファン・グー・ラオか?」
「・・・。そうだ、ファン・グ・ラーオだ。」(続く)

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