プチ・シニアの明るいひきこもり生活

オヤジひとり、ベトナム旅日記(11)

      2015/08/31

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(注:この文章は初めてベトナムに行った2006年の旅の記録です。ベトナムは急速に発展しているので、当時とはかなり大きく違っています。特に、物価等は大幅に変わっていますので、そのあたり考慮の上お読み下さい。)

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 川沿いのベンチがいくつかある。さすがに木陰でないと暑くて無理だが、運良く開いている場所を見つけ、本を読む。この町に来て何度目かだから、邪魔されることも少ない。物売りも、渡し舟の老女(なぜか、ほとんどか老女)も声を掛けてこない。飽きてくると、道の反対側にいくつもあるレストランに入り、道を行き交う人を見ながら、ビールを飲む。

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 昨日レイが言っていたが、日本人に限らず今は観光客が少ないらしい。確かに、行き交う人は現地の人が多いようだ。そういえば、工事がここかしこで行われている。工事といっても重機を使うわけではなく、人力によるものだからうるさくはないけれど、観光客の少ないこの時期に、まとめてやっているのかもしれない。古くて、静かでよい町だが、そうやって工事が続くうちに、変わっていってしまうのかもしれない。

 夕方、ふと近くにビーチがあることに気づいた。バイク・タクシーで15分くらいだから、近い。泳ぐつもりはないが、どんなビーチか見たくなった。

 ホテルのすぐ横で、バイク・レンタルをやっているおばさんが「バイク・タクシー?」と声を掛けてきた。「ビーチ」というと1ドルだと言う。まぁいいだろう。OKすると、おばさんは、急いでバイクを持ってきた。乗れ、と言う。一緒にいた男たちに頼むものだ、と思い込んでいたので驚いた。

 女性のバイク・タクシー。初めてだ。ちょっと不安になる。まぁ、小柄だが、かよわき女性というタイプなので大丈夫だろう。バイクは、田舎道を軽快に進んでいく。バイクの数が少ないから危なくはないが、その分街中よりスピードは出ている。

 彼女は、砂浜が目の前の「海の家」のところまで連れて行った。
「帰りは?何時?」
 迎えに来てくれるらしい。時計を見て、5時と答える。1時間ほどある。見るだけなら、十分だろう。

 海の家を通り抜けて、砂浜に出る。たくさんのビーチ・チェアーが、きれいに一列に並んでいる。なかなか広いビーチだが、人は、本当にまばらだ。やはりオフ・シーズンのようだ。海自体は、それほどきれいではない。それでも、数人は入って泳いでいる。そういえば私の行った海は、サムイにしろ、ペナンにしろ、きれいな海というにめぐり合ってない気がする。

 海の家の椅子に座り、ビールを注文する。町なかよりかなり高いが、しかたがないだろう。しばらく、潮風に吹かれて、ぼんやりと海を眺めてすごす。時たま、海に入っている女の子の高い声が聞こえてきた。

 この一人旅も半分ほど終わった。「何もない旅」、そう思えるかもしれないし、「充実した旅」とそう思えるかもしれない、よくわからないなぁ、とそんなことを考えていると、バイク・タクシーが迎えにやって来た。

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 バイクで帰る途中、急に雨が降ってきた。おばちゃんはバイクを止めてビニールを取り出した。顔の出る穴だけ開いていて、それをすっぽりかぶるのだ。私にもかぶるように言ったが、遠慮した。後部席ならそれほど濡れない。

 雨に濡れる町を眺めながら、昨夜レイがした話を思い出した。

「8月から段々雨が降る日が増えていって、段々気温が下がっていって、そして冬になるんです。」

 日本の冬とは違うだろうし、秋があるのかもわからないが、なぜか私はこの、長い時間を掛けて、徐々に徐々に冬になっていく、という話が気に入ってしまった。当たり前といえば当たり前だが、あまりそんなふうに考えたことはなかったからだ。

 雨に濡れたホイアンの町は、これからゆっくり冬に向かっていく、そんな静かなたたずまいを見せていた。(続く)

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